第二次世界大戦中、ナチスの強制収容所で命を賭して“真実”を記録した一人の写真家がいた――
Netflixオリジナル映画『マウトハウゼンの写真家』は、実在のスペイン人カメラマン、フランシスコ・ボイシュの実話をもとに描かれた感動のヒューマンドラマです。
「戦争の恐ろしさ」は教科書で学べても、「なぜ記録することが人間の尊厳につながるのか」は、この映画でしか感じられない。
とはいえ、「強制収容所」や「スペイン内戦」と聞くと、少し難しそうに思う人も多いかもしれません。
しかし本作は、歴史を専門知識としてではなく、“生きた人間の物語”として体感できる作品です。
むしろこれから社会に出る高校生・大学生・若手社会人にこそ見てほしい一本です。
この記事を読めば、本作を100倍深く味わうための歴史的背景から、作品に込められたメッセージ、そして制作者たちの情熱まで、その全てがわかります。
さあ、あなたも歴史の証人になる準備はできましたか?
歴史を「暗記」ではなく「感情」で理解する――
そんな映画体験の入口として、この作品をのぞいてみませんか?

作品概要

| タイトル | マウトハウゼンの写真家 |
| 原題 | The Photographer of Mauthausen |
| 公開年 | 2018年 |
| 制作国 | スペイン |
| 時間 | 110分 |
| 監督 | マル・タルガローナ |
| キャスト | マリオ・カサス、リシャルト・ファン・ヴァイデン、 アラン・ヘルナンデス |
| 作品概要 | スペイン内戦によって強制収容所の囚人となった写真家が、危険を冒してナチスの所業を捉えた写真のネガを盗み出し、証拠として残そうとする実話に基づいた物語。 |
事前に知っておきたい歴史的背景

映画『マウトハウゼンの写真家』を深く理解するためには、まずその舞台となった時代の歴史を知ることが不可欠です。
このセクションでは、物語の根幹をなす4つの歴史的ポイントを、高校の世界史レベルで分かりやすく解説します。
舞台は第二次世界大戦下のオーストリア
この物語の主な舞台は、ナチス・ドイツに併合されたオーストリアにある「マウトハウゼン強制収容所」です。
なぜなら、この収容所はナチスが敵と見なした人々を社会から隔離し、過酷な労働と非人道的な扱いで絶望させるための、まさに「地獄」のような場所だったからです。
1938年、ナチス・ドイツはオーストリアを併合。
その直後、リンツ郊外の採石場に隣接する形でマウトハウゼン強制収容所が建設されます。
ここは、ナチスの収容所の中でも最も過酷な場所として知られ、反ナチス的な政治犯や知識人などが主に収容されました。
特に「死の階段」と呼ばれる186段の石段で、囚人たちは重い石を運ぶ重労働を強いられ、多くが命を落としたのです。
スペイン内戦とフランコ政権
主人公をはじめとする多くのスペイン人がマウトハウゼンに収容されたのは、スペイン内戦で敗れ、祖国を追われた「亡命者」だったからです。
第二次世界大戦で中立を宣言したスペインのフランコ政権が、ナチスに捕らえられた自国民(内戦の敵対勢力)の保護を拒否したため、彼らは国際法上の庇護を受けられないまま強制収容所に送られました。
第二次世界大戦に先駆けた1936年から1939年にかけて、スペインでは国を二分する内乱が起こっていました。
選挙によって共和制、共産主義などの左派を中心とした人民戦線政府が成立しましたが、これにフランコ将軍率いる右派反乱軍がクーデターを起こします。
フランコ将軍側にはナチス・ドイツやイタリアが支援を表明し、人民戦線政府はソ連の後ろ盾で反ファシズムを唱え、本格的な内戦となりました。
この戦いに敗れた約50万人の人民戦線政府側の人々はフランスなどへ亡命。
しかしその後、フランスがナチス・ドイツに占領されると、亡命していたスペイン人の多くが捕虜となります。
フランコ政権は彼らを「政治犯」とみなし、スペイン国籍を事実上剥奪したため、彼らは行き場を失い、ナチスの強制収容所へと送られることになったのです。
ピカソの有名な絵「ゲルニカ」は、ナチス・ドイツがスペイン内戦に介入し、ゲルニカの街を無差別爆撃した悲劇を描いています。
主人公フランシスコ・ボイシュとは?
この映画の主人公、フランシスコ・ボイシュは実在した人物であり、彼の勇気ある行動がなければ、ナチスの犯罪の多くが闇に葬られていたかもしれません。
彼は収容所内で記録係として写真現像を命じられる立場を利用し、ナチスが行っていた残虐行為の証拠となる写真のネガを、命がけで盗み出し、仲間と共に外部へ持ち出すことに成功したからです。
スペイン内戦で共和国側として戦ったボイシュは、フランスへ亡命後、1941年にマウトハウゼン強制収容所に収容されました。
写真技術を持っていた彼は、収容所内の記録係に任命されます。
彼はその職務の裏で、SS(ナチス親衛隊)が処分しようとしていた、ガス室での大量虐殺や拷問などの証拠となるネガを密かに隠し続けました。
その数、実に約2万枚にものぼると言われています。
この証拠写真は、後のニュルンベルク裁判でナチスの残虐行為を立証する貴重な資料となりました。
つまり、ボイシュの行為は「銃を持たない抵抗運動」であり、カメラという“記録の武器”で歴史を動かしたのです。
ニュルンベルク裁判とは?
ボイシュが命がけで守った写真は、戦後に行われた「ニュルンベルク裁判」でナチスの罪を証明する決定的な証拠となりました。
なぜなら、写真という動かぬ証拠は、ホロコーストの存在を否定し、責任逃れをしようとしたナチス高官たちの嘘を暴き、歴史的な有罪判決へと導く上で極めて重要な役割を果たしたからです。
第二次世界大戦後、連合国はドイツのニュルンベルクで、ナチスの主要な戦争犯罪人を裁くための国際軍事裁判を開きました。
この裁判でフランシスコ・ボイシュは証人として出廷し、彼が隠し通した写真を提示。
収容所を視察したナチス高官が写っている写真などは、彼らが残虐行為を直接認識していたことを示す決定的な証拠となり、多くの被告に有罪判決が下される決め手の一つとなったのです。
ストーリー・あらすじ

この映画がどのような物語で、何を描こうとしているのか。
ここでは、物語の骨子となる「あらすじ」と、そこから読み解ける「作品のテーマ」について深く掘り下げていきます。
あらすじ:写真のネガに託された、たった一つの抵抗
この物語は、強制収容所の囚人となった写真家が、ナチスの非道を暴くため、命がけで証拠となる写真のネガを盗み出すサスペンスフルなストーリーです。
なぜなら主人公は、人間としての尊厳が踏みにじられる絶望的な環境下で、自分にしかできない「記録」という方法でナチスに抵抗しようと決意するからです。
スペイン内戦で敗れ、マウトハウゼン強制収容所に送られた写真家のフランシスコ・ボイシュ。
彼はその腕を買われ、収容所内で行われるナチス親衛隊(SS)の公式行事や残虐行為の記録係として働くことになります。
しかし、戦争の終結が近くと、ナチスが証拠隠滅のためにそれらのネガをすべて焼却しようとしていることを知るのです。
ボイシュは、信頼できる仲間たちと共に、監視の目をかいくぐりネガを盗み出し、収容所の外へ持ち出すという極めて危険な計画を実行に移します。
読み解くテーマ:絶望の淵で、人間は何を武器に戦うのか
本作は、暴力に対する「記録」、非人間性に対する「尊厳」、そして絶望に対する「希望」という3つのテーマを鮮烈に描いています。
これらのテーマは、主人公たちの行動が単なる生き残りのための戦いではなく、人間としていかに生き、未来に何を遺すかという、より高次の闘争であることを示しているからです。
銃ではなくカメラで戦う主人公の姿は、暴力的な権力が歴史を書き換えようとしても、「記録された真実」はそれよりも強いというテーマを体現しています。
また、命が虫けらのように扱われる収容所で、仲間と協力し未来のために危険を冒す姿は、どんな状況でも人間としての尊厳は失われないというメッセージを伝えます。
彼らが守ろうとしたネガは、単なる過去の記録ではなく、未来の世界で正義が実現されることへの「希望」そのものだったのです。
映画が伝えたいメッセージ:歴史の証人になるということ
この映画が最も伝えたいのは、歴史の悲劇を風化させず、その事実を正確に後世に語り継ぐことの重要性です。
なぜなら、主人公は自分が目撃した残虐行為を「なかったこと」にさせないという強い意志で行動しており、その姿は現代に生きる私たちに「歴史の証人」としての責任を問いかけているからです。
この物語は、フランシスコ・ボイシュという一人の男の英雄譚を描いているだけではありません。
彼が命がけで残した記録があったからこそ、私たちは70年以上経った今でも、マウトハウゼンで何が起こったのかを知ることができます。
この映画を観ること、そしてこの物語を知ること自体が、ボイシュの意志を受け継ぎ、歴史の証人となる行為なのです。
そしてそれは、同じ過ちを二度と繰り返さないために、現代を生きる私たち一人ひとりに課せられた責任でもあることを静かに、しかし力強く訴えかけています。
作品を理解するための小ネタ

映画の背景を知った上で、さらに作品世界に没入するための豆知識をご紹介します。
監督が仕掛けた象徴的な演出や、史実とフィクションの境界線を知ることで、物語の奥深さをより一層感じられるはずです。
映画ならではの象徴的なシーン・演出
本作には、セリフ以上に雄弁にテーマを物語る、象徴的なシーンや小道具が効果的に使われています。
なぜなら、映像作品である映画は、視覚的なシンボルを通して観客の感情や理解に直接訴えかけることができるからです。
例えば、この映画で最も重要なモチーフである写真の「ネガ」は、闇に葬られようとした「真実」そのものを象徴しています。
一方でナチスが撮らせるプロパガンダ用の写真は「偽りのポジ」であり、この対比が作品の核となっています。
また、残虐行為を記録するナチス党員が、ドイツの名門カメラ「ライカ」を使って写真を撮っていきます。
同じライカのカメラで子供の写真を撮るシーンは、非道な行いをする者もごく普通の家庭人であるという「悪の凡庸さ」と、美しいものを撮るための道具が大量虐殺の記録に使われるという歴史の皮肉を表現しています。
ホロコーストを描いた名作との繋がり
この映画は、『シンドラーのリスト』など、同じホロコーストを扱った過去の名作映画と比較することで、その独自性がより際立ちます。
なぜなら、これらの作品は「極限状況における人間の尊厳」という共通のテーマを扱いながらも、異なるアプローチでその核心に迫っているからです。
スティーブン・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』では、主人公が「リスト」を作ることでユダヤ人の「命」を救いました。
それに対し、本作の主人公ボイシュは「写真」を残すことで、殺された人々の「尊厳」と歴史の「真実」を救おうとします。
また、アラン・レネ監督のドキュメンタリー『夜と霧』は、記録映像を通して「忘却」に抗おうとしました。
本作はまさにその「記録」そのものを守り抜こうとする物語であり、「記録し、忘れないこと」の重要性というテーマにおいて地続きの作品であると言えるでしょう。
どこまでが実話?史実とフィクションの違い
この映画はフランシスコ・ボイシュの実話に基づいていますが、一部には映画的な脚色も含まれています。
それは、歴史の要点を正確に伝えつつ、一本のサスペンス映画として観客を引き込むストーリーテリングを両立させるためです。
主人公ボイシュの行動や、ネガを外部へ持ち出したという大筋は史実です。
しかし、物語を分かりやすく劇的にするために、複数の協力者の役割を一人のキャラクターに統合したり、ネガを隠す具体的な方法や仲間とのやり取りといった細かなエピソードには、創作が加えられている可能性があります。
ちなみに、史実でボイシュたちが守り抜いたネガは、映画で描かれるよりも遥かに多く、実に2万枚にも及んだと言われており、その事実を知ると彼らの偉業のスケールに改めて圧倒されます。
作品の評価・口コミ

| レビューサイト 評価 | 総合評価 | 68.50 | |
| 国内 レビュー サイト | 国内総合評価 | 3.10 | |
| Filmarks | 3.6 | ||
| Yahoo!映画 | – | ||
| 映画.com | 2.6 | ||
| 海外 レビュー サイト | 海外総合評価 | 75.00 | |
| IMDb | 6.8 | ||
| Metacritic METASCORE | – | ||
| Metacritic USER SCORE | 7.2 | ||
| RottenTomatoes TOMATOMETER | 86 | ||
| RottenTomatoes Audience Score | 74 | ||
実際にこの映画を観た人たちは、どのような感想を抱いたのでしょうか。
国内外の代表的な映画評価サイトのレビューを分析すると、この作品が観る者の心に強く訴えかける、確かな力を持っていることがわかります。
観客から高く評価される「観るべき一作」
本作は、批評家からは賛否が分かれる部分もあるものの、一般の観客からは総じて高く評価されており、「観て損はない良作」という評価が固まっています。
なぜなら、国内外のサイトで安定して好意的なスコアを獲得しているからです。
特に、後述する「これまで知られていなかった歴史の事実」や「主演俳優の演技」に対する評価が非常に高く、多くの人がこの映画を観たことに満足感を得ています。
「知らなかった歴史の事実に衝撃」教育的価値への声
レビューで最も多く見られたのは、この映画が持つ「歴史の証言」としての価値を高く評価する声です。
多くの観客が、この映画を通して初めて「スペイン内戦後の人々がナチスの強制収容所に送られていた」という事実を知り、その歴史的な意義に強い感銘を受けているからです。
- 「この映画を観るまで全く知らなかった歴史。語り継がれるべきだ」
- 「学校では教えてくれない歴史を学べた」
- 「子供にも見せたい」
といったコメントが国内外のサイトに多数寄せられています。
娯楽としてだけでなく、歴史の教養を深める教材としても本作が非常に優れていることを物語っていますね。
「主演俳優の魂の演技」マリオ・カサスへの称賛
作品の評価を大きく押し上げているもう一つの要因が、主人公フランシスコ・ボイシュを演じたマリオ・カサスの鬼気迫る演技です。
彼が役作りのために12kg以上も減量して撮影に臨んだことは有名ですが、その壮絶な役作りが生み出した圧倒的なリアリティが、観る者の心を強く打ちました。
- 「主演俳優の目力だけでも観る価値がある」
- 「彼の演技が、収容所の過酷さを何よりも雄弁に物語っていた」
- 「人気俳優のイメージが完全に覆された」
など、彼の役者魂を絶賛する声が後を絶ちません。
この映画の感動は、彼の魂の演技抜きには語れないでしょう。
監督・脚本・キャスト

この重厚な物語を映像化したのは、スペイン映画界が誇る才能たちです。
特に、監督の手腕と主演俳優の役への情熱が、この作品に忘れがたい魂を吹き込んでいます。
監督 マル・タルガローナ:スリラーの名手が描く歴史の真実
本作が単なる伝記映画に終わらず、息をのむような緊張感に満ちているのは、監督マル・タルガローナがスペインを代表するスリラー映画の名プロデューサーだからです。
なぜなら彼女は、観客の心理を巧みに操り、最後まで惹きつけるストーリーテリングに長けているからです。
タルガローナは、スペイン国内では数々のサスペンス作品を手がけた監督・プロデューサーとして知られています。
その経験が、史実を基にした本作においても、ネガを盗み出すシークエンスなどで最大限に活かされており、観客は主人公と固唾をのんで計画の行方を見守ることになります。
歴史の重いテーマを、エンターテイメント性の高いサスペンスとして描き切ったその手腕は見事と言うほかありません。
主演 マリオ・カサス:12kg減量で役に命を吹き込んだトップスター
主人公フランシスコ・ボイシュの、痩せこけながらも強い意志を宿す瞳は、スペインの国民的トップスター、マリオ・カサスの壮絶な役作りによって生み出されました。
彼はこの役を演じるにあたり、外見だけでなく内面からもキャラクターに同化するため、極限まで自身を追い込むことを選択したからです。
人気イケメン俳優として知られていたカサスですが、本作ではそのイメージを完全に覆し、強制収容所の囚人をリアルに体現するために、実に12kg以上もの過酷な減量に挑みました。
その結果、彼の肉体は骨と皮だけのようになり、観る者に収容所の過酷さを痛烈に伝えます。
この献身的なアプローチは、彼が単なるスターではなく、役の魂を追求する真の俳優であることを証明し、彼のキャリアにおける重要な転換点となりました。
まとめ

まとめ
- 『マウトハウゼンの写真家』は、ナチス収容所で命懸けで真実を明るみにするためにネガを隠し通した実在の写真家フランシスコ・ボイシュの勇気を描いた作品
- 舞台は第二次世界大戦下のオーストリア・マウトハウゼン強制収容所で、スペイン内戦で敗れ無国籍者となった人々の悲劇を背景にしている
- 作品のテーマは「記録する勇気」と「人間の尊厳」であり、真実を守る行為が歴史を変える力になることを訴えている
- 映画には「光と闇」「ネガとポジ」といった象徴的な演出が多く、他のホロコースト作品とも深い思想的つながりがある
- 監督マル・タルガローナの静かな演出と主演マリオ・カサスの抑制された演技が、極限の恐怖の中で人間らしさを失わない姿を印象的に描く
いかがでしたでしょうか。
一枚の写真が持つ力、そして歴史の真実を守り抜こうとした人々の驚くべき物語。
この記事を通して、『マウトハウゼンの写真家』が単なる映画ではなく、私たちの知的好奇心を満たし、教養を深めてくれる最高の教科書であることが、お分かりいただけたかと思います。
さあ、次はその感動と興奮を、ぜひあなた自身の目で確かめてみてください。
まずは、今回ご紹介した『マウトハウゼンの写真家』を、今週末にでも鑑賞してみませんか?
歴史を知ることは、決して退屈な暗記作業ではありません。
一本の映画が、遠い過去の出来事を「自分ごと」として捉えるきっかけとなり、世界のニュースを読み解く新たな視点や、多様な価値観を理解するしなやかな思考力を与えてくれます。
その知的な探求は、あなたの日常をより色鮮やかにし、未来を歩む上での確かな羅針盤となってくれるはずです。
あなたの「知りたい」という気持ちが、世界を広げる最初の扉です。
ぜひ、その扉を開けてみてください!

コメント